台湾の日本語メディアの栄枯盛衰
台湾で老舗の日本語月刊雑誌である「な~るほど・ザ・台湾」が2018年4月号を最後に休刊した。1987年3月に創刊され、最終号は373号を数えた。
創刊当時、台湾では戒厳令が布かれていて、日本語雑誌は公には認可されていない時代だったが、同年7月に戒厳令が解除され、ことなきを得たという。まさに本格的な日本語雑誌の先駆けだった。
創刊以来31年も発行し続けた、海外の日本語雑誌としては異例の存在だったが、休刊しなければならなった原因はどこにあったのだろうか。
同誌のウェブサイト(naruhodo.com.tw)には以下の休刊のお知らせ(抜粋)が掲載されている。
「台湾を紹介する日本各メディアの増加、インターネットメディアによる影響、読者ニーズの多様化と市場環境の変化により、現在の発行形態を維持することが難しく、2018年4月号(2018年4月1日発行)をもって休刊させていただくこととなりました」
つまり、これを要約すると、「時代から取り残された」ということだ。ネットメディアに押され、有名雑誌が次々と休刊・廃刊に追い込まれ、新聞も部数を大きく減らして、印刷媒体の衰退が著しい中、健闘してきた雑誌だったが、ついに力尽きたのである。
次回以降は、休刊しなければならなかった原因である「時代から取り残された」ことについて詳細に探ってみる。
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はじめに
日本と台湾は、極めて密接な関係にあります。日本語を理解する台湾人も多く、親日的な部分も多くあります。そして近年は台湾を訪れる日本人観光客、さまざまな民間交流の増加により、これまで以上に日本人にとって身近な場所になっています。
それだけに台湾の日本語情報は日本の新聞記事からNHKなどのテレビ番組、書店ではガイドブックや書籍、ネットでは情報サイト、個人ブログなどに溢れていて、10数年前の状況を知る身にとっては隔世の感があります。
しかしながら、その数が増えるに従い、メディアによって大きく明暗が分かれてきています。それはなぜでしょうか。ターゲット設定から、テーマの選定、情報の料理の仕方、広告戦略など、基本動作がずれているためなのです。
そこでどのようなメディアを作り、いかにすれば売れるのかを、現状に対する知見とともに、追求したいと思います。以下に、必要な条件を列記します。
- 台湾は日本とは身近な国であるが、想像以上に日本と違いがあり、その違いを知る。
- 同じ中華圏であるが、中国とはメディアビジネスの環境が大いに異なることを知る 。
- 台湾の政治的リスクを理解する。
理解すべきことや知るべきことは数多くありますが、まず上記3点について次回から説明したいと思います。